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明るく美しく、紙の上で踊ること。


こんな見かけでお恥ずかしいのですが、ちびのころ、バレエを習っていました。
小さな町の、古い板張りの公民館で。

憧れのバレエを習わせてもらえることにくるくる舞い上がって門を叩いたちびでしたが、
そのお教室は、思い描いていたクラシック・バレエとは違う、《モダン・バレエ》というやつでした。
トゥシューズを履いている人がいなくて、チュチュを着る人もあまりいませんでした。
初めての発表会で戴いた役は、
サン=サーンスの『動物の謝肉祭』の〈カメ〉、
くまのプーさんの〈ルー〉( 何故か子沢山。ルーだらけ )。
トゥシューズばかりか、チュチュも着せてもらうことが叶いませんでした。
ちょっと、「ちぇっ」って思いました。

当の本人は、スタイルは言わずもがなですが、何を隠そう、信じられないくらいの運動音痴なのでした( 今も )。
運動音痴の中には 大抵、[リズム音痴 ] が潜んでいるもので、音楽と共にある舞踏にはこのことは致命的であります。 

そんなわけで上達せず終いだったのですが、それでもイメージ先行型のちびの私は踊ることが好きでした。
頭の中では、誰がなんと言おうと、〈オデットひめ〉でした。

ですが、そんなへたっぴぃでホッテントットちゃんみたいな私のことを、バレエ教室の大先生は、「あなたは、雰囲気作りがとっても素敵」と仰って気にかけてくださいました。
道々お会いした時、信号待ちの道路越しに嬉しくてゴーゴーを踊っちゃい乍ら挨拶をしてくださるような、お茶目な先生です。

先生のおかげで、「雰囲気作り」を紙上に載っけることに喜びを憶えている今があるのかもしれにゃいです。

その先生ですが、20世紀前~中期に世界的に活躍した日本人舞踊家;伊藤道郎氏の腹心のお弟子さんで、白金のバレエ教室の指導をされていらっしゃった、実はとても立派な方です。
バレエを辞めた後もずっとお慕いしていて、ありがたいことに先生も応えてくださってます。

先日、パートナーを亡くされた先生へ、恐縮乍ら拙作の『ばらどろぼう』を差し上げました。
この作品には、過去や自らへのレクイエム的な意味合いも籠めているのです。
先生はいたく感激してくださり、その後のお便りの中に、一片のコピー紙が添えられていました。
それが文頭の添付文書、伊藤道郎氏のお言葉です。
同じく表現する人としてこれを戴けたのだと思うと、身の引き締まる思いです。
とても難しい、【理想】が書かれているようで気絶しそうですが、本来の人としての健やかさを讃えているようにも思えます。
また、「ほほえましい」という塩梅が、私の作品へのひとつの指標でもあります。

人として、表現者として、
明るく美しく、踊り続けなければ。

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